ママ留学記@ハーバードビジネススクール

2歳の息子を連れ、主人と2人揃ってハーバードビジネススクールに留学している一家の記録。日々の生活の様子に加え、MBA受験の経験談や、「ワーキングマザーとしての成功」に関する考察を共有したいと思います。

日本はなぜ子育てがしにくい?「完璧な母親」が求められる日本と「色々使って子育てすればいい」アメリカ

先日、ボストンで出会った日本人のママ友とランチをしてきました。その時に話に上がったのが、

「日本は子育てがしにくい」

ということ。

 

たしかにボストンに来てから、私自身も前よりも子育てが楽になった気がしています。もちろん日本では社会人、こちらでは学生と、生活リズムや日々感じるプレッシャーが全く違うので、そういうことも大きく影響しているのは確か。しかし、それ以上に育児や家事に対する考え方が変わったことが大きいと思います。

 

この記事では日本と海外の育児の状況についての違いを考えてみます。

 

そもそも日本の方が育児が大変というのは本当か

US.Newsが2018年に行った"Best Countries for Raising Kids"*1によると、子育てのしやすい国トップ3は、1位デンマーク、2位スウェーデン、3位ノルウェーとのこと。その中、アメリカは18位、日本は19位につけています。このランキングを見ると、北欧の国々がトップにつけ、その後に日本やアメリカがくるというのは、なんとなく納得がいくし、「まぁそうか」という印象。

 

ちなみにこのランキングは以下の8つの要素に基づいて評価されています。

caring about human rights, being considered family friendly, its environment for gender equality, being seen as happy, having income equality, being safe, and having well-developed public education and well-developed health care systems.

 上記の評価軸で見るとアメリカと日本はそこまで差はないという結果になっています。にも拘わらず、なぜアメリカや欧州などで子育てしている日本人のママ達は、日本よりアメリカや欧州の方が子育てしやすいと思っているのでしょうか。今回は制度面などでの違いよりも、個人的に感じている、日本とアメリカでの子育ての違いについて見ていきたいと思います。

 

日本の子育て環境について評価できる点

日本で子供を生み、2年間日本で子育てし、現在ボストンで約5か月間子育てを経験しましたが、日本が子育てしやすいところもいくつかあると思います。

まず思い浮かぶのが、安全面。やはり日本はアメリカに比べ治安がいいので、夜子供と電車に乗っても特に怖い経験をすることはほぼありませんし、気軽にお出かけできた気がします。こちらだと日が暮れた後に子供と2人で公共交通機関で移動するのは慣れていないこともありかなり抵抗があります。ちなみに今日、たまたま家の近くの路上で子供が誘拐されたという緊急速報が入って、改めて油断できないなと思いました。

また交通の便がいいのも日本のいいところでしょう。アメリカは車社会なので、車がない私達は遊べる範囲がかなり限られます。日本であれば、都内であれば比較的どこでも電車で行けますし、少し足を伸ばしてディズニーランドや葛西臨海公園などにもよく遊びに行っていました。

これは保育園によっても違うかもしれませんが、給食の質は明らかに日本の方がいいです。日本で通っていた保育園では、私が家で作ったこともないような手の凝った栄養バランスの良いメニューを毎日提供してくださっていました。こちらではピザやチーズマカロニ、パンケーキなどジャンキーな食べ物が出されることも普通にあります。(うちの息子はこちらに来てピザが大好きになりました笑)

最後に、育児休業を2年間最長取れるというのも制度としては有難いところです。私は会社の理解もあり2年間フルで育休を取れたので、その話をアメリカ人の友達に話すとかなり驚かれます。もちろん日本でもそんな悠長に育休を取っていられない、2年間も取ったら自分の戻る場所がなくなるなど、実質面でまだ改善すべきところも多いのですが、制度としてすら日本レベルのものがないアメリカに比べるといい点なのかなと思います。

 

アメリカの方が評価できる点

アメリカに来て、育児に関することで一番違うと思ったのは、育児に対する考え方でした。日本では、「できるだけお母さんが子供を見てあげるべき」(そしてここで「できるだけお父さんが見てあげるべき」という人は少ない)、「食事は栄養バランスをしっかり考えてあげるべき」、「家事も手を抜かずにやるべき」、その上で最近では「社会に戻ってしっかり仕事もすべき」と、とにかく「完璧は母親」であるべきというプレッシャーがあったような気がします。誰かが直接上記のようなことを言ってくるというよりも、育児本、検診での母親学級、他のママとの会話、会社での会話など、様々なところに散りばめられていて、暗黙のうちにそう感じてしまっているという感じでしょうか。

 

それに比べ、アメリカでは「色々使って子育てすればいい」という感覚が強いと思います。日経ビジネスの記事:三つ子虐待事件の母親を追い詰めた「男社会」の限界 (3ページ目):日経ビジネス電子版に書いてあったのですが、アメリカは国として市場労働のみ評価する傾向があり、共働きが当たり前の社会となっているので、共働きを成り立たせるために色々なものを活用しないといけないと考えるようになったのだと思います。アメリカのようにそもそも共働きでないと生活が成り立たないという状況もどうなのかと思いますが、ここで重要なのは、ては母親1人でするものではないという考えが強く根付いているということです。

 

実際、アパートについているプレイルームに行くと父親が子供を連れてきていることはよく見かけますし、今通っている保育園の送り迎えも息子のクラスでは半数は父親が来ています。家事も父親が率先してやる家も多いですし、とにかく父親の育児への参加度合が明らかに高い。そしておそらくそれを「子育ての手伝い」をしているという感覚ではなく、「父親として当たり前のことをしている」という感覚でやっていることも大きな違いだと思います。日本では週1回でも保育園の送り迎えをしり、育休を数日取ってその間だけ子育てに関与すれば、「イクメン」と周りから評価され、父親自身も「僕はものすごく育児を手伝っています」と言うと思います。ですが、子育ては日々の積み重ねそして長期的なものなので断片的に手伝うことだけでは足りず、そもそも「育児を手伝う」という親としての主体性のない考え方を抜け出せない限り、本当の意味で母親主導ではなく、両親主導の子育てにはならないでしょう。

 

またアメリカではこのように子育ては母親だけがするものではないという考えがあるため、母親に対しても寛容です。レストランで家から持ってきた食べ物を子供に食べさせても何か言ってくることはほぼないですし、子供が泣いていても「どうしたの~?」という感じで嫌な顔はされません。ベビーシッターに預けてパーティーに参加しても、「たまには大人の時間も過ごさないとね!うちも預けてきたよ」と白い目で見られることもありませんし、バスでベビーカーを開いて乗っていても何も言われません。一つ一つは小さいことかもしれませんが、こういう小さな優しさや寛容さが日本にはなくなってきているような気がします。

 

まとめ

完璧な母親が求められ、父親があまり子育てに関与しない社会。そんな社会では今後もずっと母親の育児ノイローゼや児童虐待など悲惨なニュースが続いていってしまうと思います。

父親自身が子育てを率先してやるマインドセット、そしてそれを当たり前とする社会を作っていくことが必要になってくるでしょう。そして、子育てというものが市場労働と同様に重要で価値のあることだと皆が認、一人一人が子育てしている親に対して尊敬と寛容さを持つことも大事だと思います。

具体的に何をすべきなのか・・・それは引き続きじっくり考えていきたいと思います。