ママ留学記@ハーバードビジネススクール

2歳の息子を連れ、主人と2人揃ってハーバードビジネススクールに留学している一家の記録。日々の生活の様子に加え、MBA受験の経験談や、「ワーキングマザーとしての成功」に関する考察を共有したいと思います。

HBS 1年目を終えて

 5月9日、TEMの期末試験を最後にHBSでの1年目が終わった。


子連れで本当にやっていけるのかという不安から始まり、HBS初日はついに来たんだというワクワク感でいっぱいになり、日々こなしていくうちにケースを読むのが嫌になってきたり、家族旅行を楽しんだり、コロナが広まり始めどうなるのか不安になったり、そして最終的にはオンライン授業に移行したりと、とにかくジェットコースターのような1年間だった。

 

1年振り返ってみて一番先にぱっと思ったのは、

 

「本当に来てよかった」

 

ということ。

 

アカデミックな学びに加え、人生について色々考えるきっかけになり、家族としても成長するとても有意義な1年だったと思う。

 

具体的に詳しく振り返ってみる。

 

 

1. 「エリート」という意識と責任

HBSで聞いた様々な講演において一番記憶に残っている言葉は、HBS学長が言ったもの。

どんなバックグラウンドであれ、HBSに来た今、君たち全員が「エリート」の一員である。つまり、今後の社会がどうなっていくのかは君たち「エリート」の責任であり、社会をいい方向に変えるために行動を取っていかなければならない。

 正直、私はHBSに来る前まで自分が「エリート」と思うことはあまりなく、どちらかというと「エリート」という言葉が嫌いだった。帰国子女で、東大を卒業し外資コンサルに入ってと、周囲からは「エリートコースだね」と言われることは多かったが、「エリート」という言葉は「お高く留まっている」というニュアンスがある気がして、褒められている気が全くしなかった。

 

だが、この学長の言葉を聞き、「エリート」に対する考え方と自分のマインドセットが変わった。まず自分はエリートなんだと認めるようになった。そしてその上で、自分が今まで恵まれた環境で育ってくることができ、そのおかげで今HBSにいるということをしみじみと感じ、これからは社会へ貢献していかなければならないと強く思うようになった。エリートになった今、自分の人生は自分のためだけじゃないのだと。そして社会の負の要素に対して、傍観者として文句を言っているだけではだめで、主体者としてそれを変えていく必要があると。

 

以前も記載した人生の成功の定義(人生の「成功」とは - ママ留学記@ハーバードビジネススクール)についても、やはりこの「エリートの責任」と切り離せないところがあると思う。自分だけがハッピーになる生き方は成功とは言えず、周囲の人や社会にポジティブな影響を与えられることで、エリートとしての責任を果たし、且つ自分自身の幸せにも繋がるのではないか。

 

こういう意識はHBSのような環境下だと常に意識させられるが、一旦離れると忘れがちなマインドセットなので、今後もしっかりと意識して行動していきたい。

 

2. アカデミックな学び

コンサルにいたらMBAではアカデミックに学ぶことはほとんどないよと言われていたことが多かったが、そんなことはない。

ファイナンスのWACCの計算や会社のバリュエーション、アントレのタームシートの読み方やキャップテーブルの計算方法、会計のバランスシートの読み取り方、政治経済の歴史を含めた各国の状況や意思決定とその背景の政治経済学の考えなど、今までしっかりと理解していなかったことを理解できるようになった。

 

もちろん各領域でエキスパートになったとは言えないが、少なくともその領域の「言語」が理解できるようになったことで、その領域についての議論についていけるようにはなったことは非常に大きな一歩だと感じている。

 

夫が以前PEで働いていた時は「ファイナンスなんて興味ない」と彼の仕事内容すら理解しようとしなかった私が「ここの割引率はこう計算するのかな。あとはマルチプルを見たらいいよね」と夫と話ができるようになり、夫もびっくり仰天である。

 

3. 家族としての成長

HBSに来る前は、夫は激務だったので、私が5時に退社し、子供の迎え、食事の準備など平日はほぼワンオペ的に回していた。もちろんその時も夫は週末には掃除洗濯や子供の世話をしてくれたりしていたが、全体でみるとやはり私の家事・子育ての負担が多かった。

 

子供が生まれる前はほぼ100%のエネルギーを仕事に使っていたのにそれができなくなったことで、キャリアや自分の人生に関して、「どうせ周りとは同じ土俵に上がれないのだから、とにかくなるべく負担が重くないような仕事をしたい」、「金銭的には夫に頼ればいいからもはやフルタイムはやめようかな」と思っていた節もある。

 

HBSに来て、まずは夫がものすごく変わった。今や家事・子育てはほぼ半々、というより、逆に夫の方が多く負担しているかもしれないほどになった。そのことで、私自身も余裕ができ「一人の人間としてしっかり歩んでいかなければ」と、キャリアや自分の人生についてより主体的に考えるようになった。お互い忙しく余裕がなくなることも増え、喧嘩することも多くなったと思うが、そういう時もしっかり話し合えるようになり、前よりも「1対1の関係」が築けてきたのではないかと思っている。

 

来た時は2歳だった息子も先日3歳になり、ますます成長を見せている。コロナで保育園が閉鎖してからは、トイレトレーニングを行い、1ヵ月ほどで夜以外はオムツが取れた。また毎日Zoomで保育園の先生方がライブで歌を歌ってくれたり、絵本を読んでくれたりとオンラインでのふれあいの時間ができた。始めはパソコンから話しかけられることを怖がり、大声を出し、「やりたくない」と言い続けていたが、最近行われたライブのダンスパーティーでは、スクリーンの先生の真似をしながらのりのりでダンスを披露していた。小さいながら1年間一回も病気をせずに過ごしてくれた彼のおかげで、この家族HBS生活が成り立っていることは間違いない。

 

4. コミュニティーの重要性

HBSが始まって、「セクション」と呼ばれる90人強のクラスに振り分けられ、セクションのイベントがたくさんあったりと、初めは「ビジネススクールというよりはなんだか高校生みたいなノリでちょっと・・・」と思ったことも正直あった。HBS初日にセクション担当の教授が仰られた「5-6人卒業後も仲良くいられると思う人が見つかれば大成功」という言葉を聞き、そこまで皆と仲良くなろうと積極的に動いたわけでもない。このようにセクションに対し懐疑的で且つ消極的だった私だが、最終的にはセクションが大好きになった。もちろん全員が「Best friend!!」と言えるようなことにはなっていない。それが現実。だけど、授業中のそれぞれの発言を聞いてたくさん学ぶことがあったし、セクションで行っていたMy Take(自分の人生について30分程話す会)によって皆の人生に少し触れられたし、セクションの人にしかわからないようなジョークでたくさん笑ったし、そして卒業後も仲良くしていけるだろうなという友達も見つかった。コロナという異常な状況を一緒に乗り越えられたという達成感も大きい。最後の授業では、これで皆と授業を受けるのは最後なのかと思い、うるりとしたくらいである。セクションDの皆に感謝の気持ちでいっぱいだ。

 

HBSなのになんて子供っぽいことをするのかと思っていたけど、やっぱり歴代ずっとやっているということには意味があるんだなと思った。

 

まとめ

1年目。長かったようであっという間だった気もする。
子連れでのMBAは毎日大変だったけど、とにかく1年目を乗り越えることができて達成感でいっぱい。

 

2年目の授業は完全に選択になり、今まで以上に自分でHBS経験を作り上げていく必要がある。残された1年間、悔いのないように日々大切に過ごしていきたい。